無料で受けられる健康診断!?治験モニター(ボランティア)のススメ

みなさんは,治験についてご存知でしょうか.

化学合成や、植物、土壌中の菌、海洋生物などから発見された物質の中から、試験管の中での実験や動物実験により、病気に 効果があり、人に使用しても安全と予測されるものが「くすりの候補」として選ばれます。この「くすりの候補」の開発の最終段階では、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることが必要です。
こうして得られた成績を国が審査して、病気の治療に必要で、かつ安全に使っていけると承認されたものが「くすり」となります。

人における試験を一般に「臨床試験」といいますが、「くすりの候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験は、特に「治験」と呼ばれています。

出典:厚生労働省公式サイト

治験とは,市販前の新薬が医薬品として承認を受ける際に必要とされる,ヒトを対象としたクリニカルトライアルのことを指します.一般的には治験を扱っている団体(治験施設支援機関)に個人で治験モニター(ボランティア)の登録を行い,案件が発生した段階でエントリーするかどうか判断し,希望の条件を満たす案件が発生した際にエントリーし,事前検診を受けるというフローになっています.

最近では,新薬の治験モニターに倣って,健康食品や化粧品のモニター募集も実施されているようです.

治験は,健康な方を対象とした治験と,疾患をお持ちの方を対象とした治験とに大別され,治験者になろうと考える方は,必然的に自らの健康状態と向き合うことになります.

新薬の治験モニター,健康食品・化粧品等のモニターは,商品の効能,あるいは機能の評価における重要な役割を果たしており,新薬や健康食品,化粧品を用いる前と後との差分をできる限り厳密に識別する必要が生じます.そのため,フリーターや無職の方など,健康診断を受ける際に自己負担の費用が発生する方々であっても,治験モニターを斡旋する団体に登録すれば,無料で健康診断を受けることが可能になります.さらに,事前検診や本試験に参加した場合.相応の負担軽減費がモニターに対して後日振り込まれます.

なお,治験は法的にはアルバイトではないので,負担軽減費はアルバイト代ではなく,治験バイトという表現も厳密に言うと正しくありません.

日本国内はもちろん,海外で募集されている治験モニターに参加する道も拓かれています.海外の治験であっても欧米人とフェノタイプ(薬剤感受性)が同じとは限らない日本人のモニターが求められることがあります.しかも,治験の情報は意外と公に知られていなかったりします.

そこで今回は,日本ではあまり知られていない,治験モニター(ボランティア)について記事にまとめてみようと思います!



無料で受けられる健康診断!治験モニターって何?

治験モニターとは,簡単に書くと「治験を受けるひと」のことを指します.治験を依頼するのは,新薬を開発している会社になります.

ただし,治験を依頼する会社は,治験モニターである「治験を受けるひと」とは直接コンタクトを行いません.中間に,治験施設支援機関(SMO;Site Management Organization)と呼ばれる企業,もしくは団体が介在し,治験をコーディネートします.

治験は,実際には治験施設支援機関が紹介する医療機関において紹介され,治験モニターと医療機関との間のコミュニケーションは,治験施設支援機関に属している治験コーディネータ(CRC;Crinical Research Coordinator)が支えています.

2018年に放送された日曜劇場「ブラックペアン」(TBS系)では,治験コーディネータを取り上げ,事実と異なる描写が含まれていたことから臨床薬理学会から抗議文が送られて騒ぎになったこともあり,結果的に治験や治験モニターに対する知名度も上がったのではないかと思います.

無料で受けられる健康診断!治験モニターを受けるメリット

また治験は、効果や副作用を慎重に検討するため、患者さんに通常より多くの検査を行ったり、通院頻度が増えたりする。
患者さんは治験に参加することで、新たな治療を受けるチャンスと引き換えに、余分な交通費がかかったり、仕事を休んだりする必要がある。
この患者さんに強いる経済的負担を軽減するため、「負担軽減費」が支払われる。
病院によってルールは違うが、たとえば「1回の通院につき7000円お支払い」といった形である。

出典:
ブラックペアン 第2話感想|治験コーディネーターがトンデモすぎる件(外科医の視点)

「外科医の視点」では,北野病院消化器外科の医員で,京都大学医学部附属病院 iACT 大腸癌新個別化治療プロジェクトの博士研究員である山本健人さんが,”患者さん”という表現で書かれていますが,治験モニターのことを指しています.

治験モニターには,比較対象のコントロールとしての健常者と,クスリの効果や副作用を調べたい患者さんの両方が含まれ,いずれの治験モニターに対しても,相応の負担軽減費が支払われます.治験モニターに支払われる負担軽減費は,確定申告の際は雑収入として取り扱われます.

個人的には,一般市民が治験モニターに参加する最大のモチベーションは,

1.個人の時間を切り売りし,高頻度の採血や薬剤投与等に対応することで,相応の負担軽減費という名の雑収入が得られる
2.治験モニターに参加する前提として,無料で健康診断が受けられるため,自らの健康状態に対する関心が高まる

ことだと思っています.

献血も治験と似たようなところがあるという方もおられますが,献血ボランティアに対して治験のような負担軽減費に相当するお金が個人の口座に振り込まれることは,少なくとも現在の日本ではありません(かつては日本にも売血が認められ,血液がお金になった時代がありました).

負担軽減費は医療機関への往復にかかる交通費などの必要経費が差し引かれる前の金額になりますので,治験モニターに参加して負担軽減費が振り込まれても,実際には差し引きマイナスの持ち出しになることもあり得ます.特に近隣都市で治験対象の医療機関がない方が治験モニターに参加される場合には注意が必要です.

逆に言うと,

1.ある程度自由になる時間があり
2.治験の対象となる医療機関が多い都市もしくはその周辺に住んでいる

ことが,治験モニターで享受できるメリットを最大限に生かせるかどうかのポイントかと思います.

献血ルームも地方都市からどんどん廃止になっていますが,治験も対象医療機関へのアクセスに地域差があるのは否めませんね.

ただし最近では,まったく医療機関に行かずして参加できる治験モニターの公募も見受けられますので,地方都市でも治験モニターに参加すると必ずしも持ち出しになるということばかりではなくなってきています.

無料で受けられる健康診断!治験モニターの登録をするには?

治験モニターになるためには,治験を扱っている団体(治験施設支援機関)に個人で治験モニター(ボランティア)の登録を行う必要があります.

いくつか有名な治験施設支援機関を挙げてみます.

医学ボランティア会(JCVN)

友人に勧められて登録しています.対象医療機関は首都圏が中心です.

特に興味深いのは,宇宙航空研究開発機構(JAXA)の治験モニターを扱っていることです!

単に新薬の臨床試験の被験者として参加するのとは訳が違います.

宇宙開発に貢献できるという希少なワクワク体験が味わえると思います.極めてレアな案件ではありますが,宇宙好き,科学好きな方にはもってこいではないでしょうか.

3Hクリニカルトライアル(生活向上WEB)

日曜劇場「ブラックペアン」で治験や治療コーディネーターに対する描写がトンデモである点に言及した,がん情報サイト「オンコロ」を運営している会社です.新薬の治験モニターにとどまらず,健康食品や化粧品等のモニター募集の案件もあり,案件がバラエティに富んでいて楽しいです.もちろん,新薬と比べると健康食品や化粧品等のモニターの方が,予算の関係でモニターに支払われる負担軽減費の額もそれなり(に安い)という感じですね.



出典:3Hクリニカルトライアル プレスリリース

健康情報のメディアミックスをかけていることもあって,会員数も右肩上がりで伸びているようですね.

治験ジャパン(feileB(フェルビー))

治験コラム・体験談一覧が充実しています.国内のみならず,海外での治験に関する情報も紹介されています.

海外の治験は報酬が高いのか?

治験といえばやはり高い報酬が魅力の1つです。では海外の治験に参加するとどのくらいの報酬がもらえるのでしょうか。

治験の報酬は、拘束時間、禁止事項、副作用の出る確率、副作用の重さなどによって大きく異なります。前述の通り、通院タイプの治験よりも入院タイプの治験の方が高報酬です。アルコールの摂取、激しい運動などが制限される場合も報酬が高くなる傾向があります。

副作用も胃が荒れる、少し頭痛がするなど軽度のものから、吐き気や湿疹といったやや重度なものまであります。副作用が出やすいと考えられる薬、強い副作用が出る恐れがある薬の場合は、リスクのぶん、当然報酬は高くなります。

平均的には入院タイプの治験の場合、1泊あたり3万円から5万円程度の報酬であることが多いようです。国内の入院タイプの治験では1日あたり2万円程度が平均的な報酬であることを考えると、海外の治験の方がかなり高額の報酬が得られることが分かります。
なかには4週間程度の入院で100万円ほどの報酬が得られる治験もあり、バックパッカーなどに非常に人気です。

出典:海外での治験とは?|治験モニターのススメ(治験ジャパン)

情報を見つけてくるだけで敷居が高く,健康リスクもそれなりに気になる海外での治験ですが,高額報酬というので惹かれる方もおられるのかもしれませんね.


日本国内での治験は,海外ほどの金額が振り込まれることはありませんが,健康リスクも比較的低いのが特徴かと思います.もちろん,治験はリスクゼロではありませんので,念のため申し添えます.

あくまでも個人の判断のもとで,治験にチャレンジしてみる選択もアリかもしれません(K.T).