フードロス(食品ロス)をなくそう!コロナ禍のいまだからこそ環境にやさしく生産者にやさしく自分の懐にもやさしく

食品事業者から一般消費者まで流通する段階で,流通量と実需要のギャップで生み出されるフードロス(食品ロス)の問題は深刻です.

連休直前に決まった東京都,大阪府,兵庫県および京都府の緊急事態宣言においても,大量のフードロスが発生した模様です.いくら飽食の時代だからとはいえ,常軌を逸した人為的なフードロスは,個人的にも大きな社会問題だと感じます.

大消費地では,食品加工を行なっている事業所と一般消費者とのフードマイレージ(食料輸送距離)が短く,物流頻度も高いことから,食品流通におけるフードロスはあまり目立ちません.ところが,大消費地から離れた地方都市のように,食品製造と消費者までのフードマイレージが長くなるにつれ,物流頻度が下がり,需要予測の精度も低くなって,売れ残りの廃棄や欠品が多くなりがちです.

コロナ禍の現在は,飲食店や宿泊施設向けに供給されている加工食品等の需要予測が立てにくく,製造供給体制のギャップはどうしても広がってしまいます.大型連休を間近に控えたわずかな期間に行政の方針が激変し,生産者の仕込予測がまったく立たないような状況であればなおさらですね.

そこで今回は,外部環境が激変してもフードロスを極力なくし,環境にも生産者にも消費者にもやさしくなるための試みについて深掘りしてみたいと思います!

フードロスをなくそう!フードマイレージって何?

食品に限らず,様々なモノやサービスに対して地産地消が喧伝されるようになって来ました.
もともとは,地元経済をサポートするために,なるべく地元のモノやサービスを利用していこうという流れだったかと思います.

フードマイレージとは,食品の産地や加工地から消費するまでの距離のことを指します.

フードマイレージは,輸送コストや輸送時間に影響します.首都圏のように,調理済みの中食(持ち帰ってすぐに食べられる日配品)をはじめ,賞味期限の短い生鮮食品のフードマイレージは比較的短く,流通頻度も多いため,流通量の調整もかけやすく,流通段階におけるフードロスは出にくいように思います.

これが,例えば陸送で半日かかる地域の拠点都市からの流通に依存しているような地方都市の場合だと,欠品や売れ残りが多くなります.

都市部と地方の二拠点居住をしていると,日配品の流通に関する地域差をなおさら強く感じるようになります.

思わず買いすぎたとか,つくりすぎたということで生じる家庭内で発生するフードロスももちろんありますが,流通過程で発生する,供給と需要のギャップから発生するフードロスは無視できない存在です.たんに環境や資源の負荷を考えるだけでなく,見込み違いでつくりすぎてしまったモノについても,無駄なく消費するためのシステムを構築していったり,工夫を凝らすことが重要かとおもいます.

フードロスをなくそう!フードロスを減らす試み

抜本的にフードマイレージを短くする(食品生産・加工の現場と消費者との距離を縮める)ことや,準備がとても追いつかないような短期間のうちに社会に対してラディカルな行動変容を求めるような政治判断を見直すことでフードロスを減らそうと考えても,正直言って個人の努力によって瞬間的にはどうすることもできないと思います.

とは言え,次善の策として,フードロスを減らす試みとして打てる手はいくつか考えられるかとおもいます.

つくりすぎて行き場を失った商品を可視化し,消費者が購入することによって食品生産・加工者を支え,過剰在庫を減らす

以前,コロナ禍で注文が相次いでキャンセルとなり,在庫の山となった神山のすだちを送料無料のお値打ち価格で購入したことがあります.

私はたまたま,神山のすだちが大量に在庫で余ってしまっていたことを,友人のFacebookの書き込みを通じて知りました.

せっかくの話も,あまりに多くの情報が飛び交い,過去の自分の検索履歴が反映された形でしか検索が難しくなった状況下では,その存在に気づくことはよほど情報のアンテナを高くしておかない限り難しいのではないかと思います.

5月4日のテレビ朝日「スーパーJチャンネル」でも,突然の緊急事態宣言を受けて発生した大量のフードロスをなんとか無駄にしないようにする取り組みが放送されていました.流通を無視して発生するフードロスは,まさに人災というしかないのではないかと思います.

フードバンクを利用してフードロスを引き取り流通するように支援する

農林水産省では,食品受入能力向上緊急支援事業(フードバンク支援事業)を予算化し,フードロスの削減と生活困窮者等への支援の両面からサポートを行っています.

出典:農林水産省

職場でも,コロナ禍でアルバイトの仕事がなくなり生活困窮に追い込まれた学生さんたちが,フードバンク支援事業によって食料の支援を受けるという光景を目にしました.

国や地方自治体などもコロナ禍の対応として,金銭面での支援を行ってはいますが,必ずしも必要十分とは言えず,コロナ禍の先がなかなか読めない中で,フードバンクを支援することでフードロスの削減を目指すという動きには,個人的にもたいへん注目しているところでした.

2016年には,はこだて国際科学祭においてもフードロスの問題を取り上げていました.

フードチェーンのステークホルダー同士をつなぎ調整を促進する

国際連合食糧農業機関(FAO)は,フードロスを減少させるために,フードチェーンのステークホルダー同士をつなぎ,調整を促進することの重要性について言及しています.

Bringing people together to reduce food loss and waste

Everyone has a part to play in reducing food loss and waste. FAO accordingly works with a broad spectrum of stakeholders and partners to tackle the problem. At the macro level, FAO works in collaboration with governments and other international bodies to promote awareness and advocacy on the issues and to develop policies to reduce FLW. At the meso-level, FAO’s activities facilitate coordination among food supply chain actors – farmers, handlers, processors and traders, in collaboration with the public and private sectors and civil society. At the micro level, FAO focuses on consumers and changing their individual attitudes, behaviours, consumption and shopping habits related to food. This is done through education, particularly focusing on providing information on safe food handling, proper food storage in households and understanding “best before” dates in order to prevent and reduce food waste.

出典:国際連合食糧農業機関(FAO)

FAOが言及しているような,大規模のステークホルダーダイアローグは労力と資金が必要であることから,実現までのハードルは高そうですが,SNSによって個人と個人が直接つながりやすくなってきていることから,当事者間での直接的なやりとりが増えていけばダイアローグの機会も増えてくるのではと思料します.

いずれにせよ,対話のためのプラットフォームがないと,なかなかいきなり何もなしのところからつながっていくというのは難しいと思います.プラットフォームを用意するなり,参加者同士の交流も可能な対話の場づくり(足場かけ)も必要になってくるでしょうね(K.T).