ジャガイモの天然毒素ソラニンは水溶性!ジャガイモをおいしく安全に食べるには?

2019年7月9日,宝塚市の小学校の校内の畑に植えられたジャガイモを使って調理実習が行われ,調理されたジャガイモを食べた児童が食中毒を起こして病院に救急搬送されるという事案が発生し,マスコミ各社がこぞってニュースに取り上げていました.

おいしいものにも毒がある ~ジャガイモのキケン~|NHK News Up
https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/300/200/413998.html

福岡県弁護士会のサイトには,2020年10月にジャガイモの天然毒素による食中毒を取り扱った本の書評が掲載され,話題となっています.

ジャガイモによる食中毒が毎年、学校で起きている。それは秋ジャガではなく、春ジャガに限られる。ジャガイモの表皮の内側に有毒物質がある。そこは虫にかじられることが多い部位。食べられるのを防ぐため、緑色の部分には有毒な物質がふくまれている。そして、このジャガイモの有毒物質は、お湯で茹でたり、油で揚げたりして調理しても、毒性は消えない。
この有毒な物質は、ジャガイモが芽を出すには必要なもの。つまり、有毒な物質がつくられなければ、芽を出さない。それだけジャガイモは慎重で、用心深い。
私はジャガイモを毎年つくっていますが、幸い、食中毒になったことはありません。もちろん、掘りあげたあとに日光にあてて緑色に変色しないよう、用心はしています。

出典:弁護士会の読書「植物はなぜ毒があるのか」|福岡県弁護士会

2020年2月16日にも,デンバー近郊に住む女性が,緑がかったジャガイモを食べて集中治療室に運ばれたことが全米でニュースになりました.

https://whnt.com/news/colorado-woman-ends-up-in-er-after-eating-poisonous-green-potatoes/

DENVER (KDVR) – A Denver area woman is warning others after a serious health scare with potatoes. On Sunday, Maria Harless says she was getting over a cold when she got a craving for comfort food. …


国内で報告された食中毒のうち,自然毒を原因とする食中毒で,なかでも高等植物による食中毒として広く知られているがジャガイモです.ジャガイモの食中毒は一年を通じて発生していますが,とくに食中毒の発生が多いのが,新芽が出てくる4月から5月の時期になります.ジャガイモの毒素は,ソラニンやチャコニンといった有害成分が知られていますが,ピーリング(皮むき)して芽の部分をカットすれば食中毒が防げるかというと,そうとは限りません.芽が出たジャガイモを食べることは問題外ですが,発芽しなかった芯が硬くなっているジャガイモ,光があたって皮が緑色になったジャガイモ,十分育っていないジャガイモには,ソラニンやチャコニンが多く含まれているので食べないようにしましょう.



未熟なジャガイモだけでなく熟れすぎたジャガイモにも含まれるソラニン

熟し過ぎてジャガイモの緑がかった部分には,有害成分のソラニンが含まれています.
ソラニンはジャガイモを昆虫や疫病から守る天然毒です.ソラニン含量を増やさないようにするには,ジャガイモを直射日光に当たる場所に置かないということが重要です.軽度のソラニン中毒の場合でも,腹痛,吐き気,嘔吐,下痢,発熱などの症状が現れる危険性があります.ソラニンを大量に摂取すると,死に至ることもあります.

出典:
Everyday Things You Didn’t Know Were Toxic|Big Easy
https://www.bigeasymagazine.com/2020/10/19/everyday-things-you-didnt-know-were-toxic/

Chuck Martin: Potato musings|Midland Daily News
https://www.ourmidland.com/lifestyles/article/Chuck-Martin-nbsp-Potato-musings-nbsp-15646921.php

でも,安全にジャガイモを食べることは,そんなに難しいことではありません.

Experts recommend cutting the green parts of potatoes away from the rest of the vegetable and throwing them away. Always remove the eyes of green potatoes too because they can contain higher concentrations of solanine.

“My advice would be to store them in a dark place like you’re supposed to because I left them out in the sunlight, which made them even greener. And peel the potatoes and if it’s green, just don’t even eat it. Just throw it away,” Harless said.

出典:Colorado woman ends up in ER after eating poisonous green potatoes
https://www.fox6now.com/news/colorado-woman-ends-up-in-er-after-eating-poisonous-green-potatoes

ジャガイモの皮をむき,芽の部分をとり,緑色になったところはカットして食べずに捨てるだけで大丈夫です.全体が緑色になってしまったジャガイモは食べないに越したことはありません.

ポテトチップスのジャガイモは水洗してから高温の油で揚げるのでソラニンの毒が問題にならない

ポテトチップスのジャガイモは,原料芋を水洗し,ピーラーで表面部分を剥ぎ落とし,さらに芽の部分をカットしてからフライヤーで高温の油を使って揚げています.そのため,ジャガイモの加工食品であるポテトチップスの場合は,ソラニンやチャコニンといったジャガイモに含まれる有害成分よりも,むしろ原材料に含まれる一部のアミノ酸や糖類がフライヤーで揚げられた時に起こる化学反応によってできるアクリルアミドのほうが問題になるのです.

参考:
食品中のアクリルアミドに関する情報|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/index.html

安全で健やかな食生活を送るために ~アクリルアミドを減らすために家庭でできること~(詳細版)|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_syosai/index.html

ソラニンは水溶性で水洗によって減らすことができるが熱分解はしない

未熟なジャガイモや芽が出たジャガイモを,そのまま皮もむかずに食べることは基本的にはないと信じたいところですが,最近の,特に学校現場において多く発生している食中毒事案を見ていると,ジャガイモを喫食する際に注意すべきことがほとんど意識されていない例が散見されます.

1.芽の部分は必ずカットする
2.皮も必ず剥く
3.光合成によって緑色に変色したものは,皮を剥いてもソラニンが残っている可能性があるので食べない
4.皮を剥いた後も水でよく洗い流す

参考:
ソラニンやチャコニンの加熱調理による影響|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/solanine/kanetsu/kanetsu.html

ジャガイモは冷蔵庫に入れると早く傷むこともある

ジャガイモの保存には,遮光と乾燥が重要です.遮光は,文字通り光を遮ることによってジャガイモじたいの光合成をシャットアウトするということです.乾燥は,濡れ芋が湿気でかびて腐れが発生する例を想像していただければ概ね推察がつくかと思いますが,ジャガイモ保存の絶対条件です.

冷蔵庫に入れて保管するというのもジャガイモにとっては曲者で,そのまま冷蔵保管すると逆に乾燥しすぎてしわしわになってしまいます.また,低温で保管することにより糖度が上がるため,揚げた際のカラーが濃くなるという問題も発生します.短期間であれば常温保管が良いのですが,喫食にやや時間を要する場合は野菜室のような冷えすぎない場所に保管することをオススメします.

ティーブレイク:なんとソラニンフリーのジャガイモが誕生!?

ジャガイモは有毒なステロイドグリコアルカロイド(SGA)の一種であるa-ソラニンを塊茎※5 の緑化した皮や新芽に蓄積しています。SGAはジャガイモだけでなく、トマトやナスなどのナス属作物に含まれるアルカロイドで、幅広い生物に対して毒性を示すため天然の防御物質として機能しています。ジャガイモのSGAは低濃度では“えぐみ”などの嫌な味の原因となり、多量に摂取すると食中毒を引き起こします。ジャガイモの育種において、SGA含量を低く抑えることは重要かつ不可欠な課題です。そのため、これまでにジャガイモのSGA蓄積量をコントロールすることを目的とした生合成研究が行われてきました。

ジャガイモの毒性成分α-ソラニンの高蓄積は食中毒を引き起こします。つまり、ジャガイモは潜在的に危険な食品であると言えます。本研究の成果をもとに、将来、DPS遺伝子を標的として毒性成分の合成能をコントロールしたジャガイモの育種が可能となると期待できます。

出典:神戸大学プレスリリース

現段階では,ソラニンによる食中毒の危険と背中合わせのジャガイモですが,毒性能を育種によってコントロールし,ソラニンを気にしなくても食べられるジャガイモが,近い将来,私たちの食生活を賑わせる時代が来る可能性が出てきました.

そうなると「むかしは,ジャガイモを食べて食中毒を起こすこともあったんだよねー」などという茶飲み話が自然と交わされるようになるかもしれませんね!


出典:神戸大学プレスリリース

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原種はもともと,ソラニンを多く含むためにそのままでは食べることができませんでしたが,アンデスの山岳部では凍結融解を繰り返して水分を取り除き,水に浸漬し乾燥する過程を経ることによって食べられるということを,食習慣の知恵として伝承してきました.ジャガイモはやせた土地や寒冷地で生育するため,ふるくから栽培種の開発が行われてきました.しかし現在ではジャガイモはそもそも食中毒を起こし,場合によっては人を死に至らしめる有害成分を含んでいるという事実さえも知らずに学校教育の現場で喫食が行われ.今回に限らず,恒例行事のごとく度々食中毒事故を起こして都度ニュースになっています.ジャガイモに限らず,栽培品種の育成の歴史や背景は決して知っておいて損はないとおもいます.むしろ,サバイバルのために自ら積極的に知っておくべきことであると言えるのかもしれませんね.(K.T)