【新型コロナ】12月から世界最高感度の新検査法の実証実験開始|浜松市・浜松医大ほか

新型コロナウイルスの感染者数がニュースにならない日の方がめずらしくなった2020年も,残すところあと1ヶ月を切りましたね.不安なことも多々あろうかと思いますが,明日を信じて前を向いて毎日を生きていければと思います.

そんな中,12月1日付の浜松市のプレスリリースで明るい話題が出ていましたので,早速ご紹介しましょう!




(新型コロナ・検査)今回の浜松医大の実証実験の概要は?

本学は、浜松市の協力、(株)日立社会情報サービス、(株)タウンズ、NanoSuit(株)の協賛のもと、イムノクロマトグラフィ(抗原検査)の新検査法を用いて、今冬、新型コロナウイルスの偽陽性、偽陰性患者を検出する検証実験を実施します。
 本実証実験では本学光尖端医学教育研究センターナノスーツ開発研究部と医学部附属病院検査部が協力して、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス感染疑い患者に対してイムノクロマトグラフィとPCR検査を同時に行います。抗原検査とPCR検査の結果に差がでた症例に関して、世界最高感度でイムノクロマトグラフィ法であるナノスーツ法-卓上電子顕微鏡を用いて再検証を行い、臨床情報と比較検討することにより正確な偽陽性・偽陰性の検出を試み、感染性のある症例の抽出を検討します。本実証実験により自治体・住民の安心・負担軽減につながることを目指します。

出典:新型コロナウイルスの偽陽性、偽陰性患者を検出する検証実験を実施します|浜松医科大学
https://www.hama-med.ac.jp/topics/2020/26616.html

「withコロナ」社会の負担を減らし 国民の安心を促進する新検査技術の実証実験
  〜電子顕微鏡を用いた新型コロナウイルスの高精度抗原検査〜(PDF)
https://www.hama-med.ac.jp/mt_files/a3e72820b6fca70c1045f8e5f4a8db18.pdf

浜松医科大学ナノスーツ開発研究部が実施主体となり,浜松医科大学に来院された新型コロナウイルス感染の疑いのある外来・入院患者さんに対し,抗原検査とPCR検査の結果に差がでた症例に関し,ナノスーツ法と呼ばれる,生物を模倣したコーティングによる電子顕微鏡観察技術を組み合わせたイムノクロマトグラフィー検査を用いて再検査を行います.

参考:
Sensitive quantitative and rapid immunochromatographic diagnosis of clinical samples by scanning electron microscopy – preparing for future outbreaks|medRxiv
https://doi.org/10.1101/2020.05.20.20106864

ナノスーツ法のコア技術については,浜松医科大学のスピンアウトベンチャーであるナノスーツ社が動画にまとめています.

生物学の研究を続けてきた中で、15年ほど前にバイオミメティクス研究(生物を学び、人間の叡智によって‘ものづくり’を進める分野)が欧米で始まっていることを知り、我が国における発展が不可欠であると考え研究推進をして参りました。生物の表面構造をナノからミクロンまでサブセルラーサイズでできる限り生きたままの姿でしっかり観察する必要が生じました。そこで誕生したのが日本発のNanoSuit®法の技術です。

NanoSuit®法では、生物を生きたまま、あるいは固定標本などを濡れたままで電子顕微鏡観察を行います。観察の為の処理は比較的簡易で短時間で導電性も付与できるため、形態の微細構造の変化は、ほとんどありません。従来法の技術の特徴と合わせて観察すれば、これまでの知見と共に新たな視点が加わり、生命科学の理解は一層深まります。個体や組織、細胞や生体微粒子(ウイルスやエクソソームなど)の電子顕微鏡観察が可能となり、EDSなどを用いて生体そのものの多様な元素分布をイメージング分析することにも成功しております。また、Pinhole freeの自立膜を作ることができることも、魅力の一つです。

出典:代表挨拶|NanoSuit Inc.
https://nanosuit.jp/aboutus/

静岡県内でも,浜松市と静岡市はレベル5の特別警戒に相当するということで川勝知事が11月27日に臨時記者会見を開いたところでしたので,まさに時機を得た実証実験と言えるのではないかと思います.

(新型コロナ・検査)イムノクロマトグラフィー検査って?これまでは何が課題だったの?

もともと,イムノクロマトグラフィー検査は抗原抗体反応を応用して行われる迅速検査ですが,新型コロナウイルス感染症の検査として広く利用されているPCR法に比べると感度が高くないため,感染初期および発症後10日目以降においては追加でPCR法による確定検査を行わなければなりませんでした.


参考:抗原抗体反応について|協和キリン

何を言っているかというと,PCR法は精度が高い一方で検査結果が得られるまでに時間を要し,イムノクロマトグラフィー検査は迅速に結果が得られるものの偽陰性(いわゆる「取りこぼし」)が避けられなかったということです.

(新型コロナ・検査)新検査法はこれまでと何が違うの?社会的な意義は?

今回実証実験が行われる新検査法は.サンプル表面を生体適合性物質を用いてコーティングすることで,迅速なイムノクロマトグラフィー検査でありながらPCR法レベルの感度が得られるというものです.



出典:浜松市プレスリリース

臨床データと突き合わせることによって,実証実験の裏付けが取れれば,新型コロナにかんする検査法の信頼性を高めることにつながりますよね.

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偽陰性を減らすことによって,陽性者数が増えることにはなるかもしれませんが,取りこぼしが減らせるという意味において社会への安心へとつなげることになることでしょう.

実証実験が成功裏に終了し,1年近くにわたって私たちを翻弄させ続けてきた新型コロナウイルス感染症の検査結果がより信頼できるものになることを願ってやみません(K.T).