3月8日放送の日本テレビ「所さんの目がテン!」では,新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に着目し,「免疫力を上げてウイルスに負けない体づくり」と題する特集番組が放送されました.
その中で取り上げられていたのは「抗酸化物質」.
では,抗酸化物質と免疫力アップ,さらに新型コロナウイルスとはどのような関係があるのでしょうか.順を追ってみていきたいと思います!
コロナウイルスとは
表面がエンベロープと呼ばれる,脂質,タンパク質,糖タンパク質からなる膜で覆われている「エンベロープウイルス」の一種です.エンベロープと細胞膜の融合によって細胞内に侵入し感染を引き起こします.
コロナウイルスの名前は,王冠(コロナ)に似た突起(スパイク)をもっていることから由来しています.コロナウイルスの感染メカニズムに関しては,エボラウイルス,SARS等の研究が進んでいることから,新型コロナウイルスと呼ばれる,COVID-19に関してもその知見が生かせるということで注目を浴びています.
幸いにして,アルコール消毒剤を使えば,アルコールが細胞膜を溶かし,ウイルスにダメージを与えることができるため,手指消毒を基本としたうえで,さらにバランスの良い食事やストレスの軽減など,免疫力を高める生活習慣の励行が,ウイルス感染予防の観点からは極めて重要と言えるかと思います.
免疫機能とは
免疫機能の基本は,非自己(異物)細胞を自己と識別し排除する生体防御機構です.免疫には,もともと生体に備わっている自然免疫と,生まれてから獲得していく獲得免疫との2つのしくみが存在します.
これら2つのしくみの組み合わせによって生体をウイルスの感染やがん細胞の増殖から守ります.抗酸化酵素の活性が低下すると,酸化ストレスに対する抵抗性が弱くなり,その結果免疫機能の低下が促進されることが示唆されています.
つまり,免疫力をアップするためには,抗酸化物質を多く含む食品群を積極的に摂取することが重要というわけですね.
免疫力アップで注目度アップの抗酸化物質(1)リンゴポリフェノール(プロシアニジン)
「所さんの目がテン!」では,活性酵素の働きを抑制し,細胞を傷つけにくくする「抗酸化物質」の筆頭として,ポリフェノールを挙げていました.
ポリフェノールは,リンゴの皮などに多く含まれており,リンゴに含まれるポリフェノールをリンゴポリフェノールと呼んでいます.その主成分はプロシアニジンと呼ばれるものです.プロシアニジンは,お茶に含まれるポリフェノールであるカテキンよりも抗酸化力に優れていることが明らかになっています.
Illustration by JSBBA
できる限り生のままの状態で,カットした後に酸化して茶色くなる前に皮ごと食べるのが良いでしょう.また,表示が義務付けられている特定原材料に準ずる食品20品目の中にリンゴが含まれていますので,からだに合わない方はリンゴの摂取は避けたほうがよいと思います.
参考:
りんごと健康|青森りんごの会
リンゴポリフェノールの健康機能性とその活用|日本食品化学工学会誌
免疫力アップで注目度アップの抗酸化物質(2)ファイトケミカル
「所さんの目がテン!」では,抗酸化物質が豊富に含まれる野菜の皮を美味しくいただく方法がスープにすることだ,と放送していました.
野菜くずのスープには,ファイトケミカルと呼ばれる機能性成分が豊富に含まれています.2018年2月18日放送の「所さんの目がテン!」で,野菜くずのスープについて詳述しています.
ファイトケミカルが多く溶け出し,スープに向く野菜としては,
・にんじん
・トマト
・かぼちゃ
・パブリカ
などの甘みが強く,色鮮やかなものを挙げています.
パスタや味噌汁のだし,炊き込みご飯,うどんなど,いろいろな料理に使えて便利です.
参考:
第1413回 2018.02.18「野菜くずの科学」|所さんの目がテン!
免疫力アップで注目度アップの抗酸化物質(3)イソフラボン
「所さんの目がテン!」では,抗酸化物質が豊富に含まれる成分としてイソフラボンを挙げ,みそ汁の効用を述べていました.
・きくらげを使った疲労回復みそ汁
・食物繊維たっぷり芋づくしの免疫力アップみそ汁
・老化を抑える抗酸化物質をたくさん含む仙台みそ
などを取り上げていました.
仙台みその機能性については,宮城県味噌醤油工業協同組合のサイトに詳しく載っています.
免疫力アップで注目度アップの抗酸化物質(4)カテキン
「所さんの目がテン!」では,静岡県民の健康長寿の秘密はお茶であるとしたうえで,お茶をたくさん飲むことの重要性を伝えていました.お茶の中に含まれる抗酸化物質としてはカテキンが知られています.
日本カテキン学会では,カテキンによる抗ウイルス作用のメカニズムを紹介し,カテキンの効用を強く訴えていますね.
参考:
抗ウイルス作用|日本カテキン学会
免疫力アップで注目度アップの抗酸化物質(5)エラグ酸・アスコルビン酸(ビタミンC)など
「所さんの目がテン!」では,フルーツ王国といわれる,健康寿命全国1位山梨県を取り上げ,イチゴなどのビタミンCを含む食品の摂取によって免疫力アップに期待ができると紹介していました.
農研機構もイチゴの抗酸化作用に着目し,高い抗酸化活性に着目したイチゴ品種の育成や抗酸化成分のメカニズムなどについての研究を行なっていますが,科学的には未知のものが多いようです.
イチゴの抗酸化活性におけるエラグ酸の構成比率|九州農業研究(pdf)
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食品成分中の抗酸化活性に着目して,免疫機能を高めようという試みは悪くないと思います.
新型コロナウイルス (COVID-19)に関しては,不明なことが多いのが現状ですが,推測であっても確度がより高く,論理的な情報に関しては,その旨を示した上で積極的に情報発信することが重要と考え,関連する論文の引用などと合わせて番組の紹介を行っています.(K.T.)