植物肉という名称の食品をご存知でしょうか.
ひとことで言うと,植物由来の代替肉(plant-based meat)のことを指します.
一見,矛盾している名称のようにも聞こえますが,環境保全や動物愛護への配慮という点も相俟って,現在進行形の食糧問題を解決する糸口のひとつとして考えられています.
本格的に植物肉の流通が広がりを見せたのは比較的最近になってからのことですが,現在の延長線上に人口増加と食肉の需要増が進んでいけば,将来確実に食料危機が起こるものと懸念されています.そのため,食糧危機を救い,かつ高まる食に対するニーズを満たす代替肉の筆頭として期待される植物肉は,今後さらに市場は急成長することが考えられます.
今回は,注目の植物肉の動きについて,いくつか具体的な事例をチェックしてみたいと思います.
ビヨンドミート(Beyond Meat)が開発した植物肉のビヨンドバーガーが注目されている
ビヨンドミート(Beyond Meat)は,米国で2009年に創業し,世界で初めて代替肉分野でNASDAQ上場を果たした企業として知られています.
ビヨンドミートが開発した植物肉は,社名をとってビヨンドバーガーと命名され,本物の肉と遜色ない味や食感であったことから,多くの人の驚愕を呼びました.
出典:ビヨンドミート 公式サイト
植物肉を食べたことがない人であれば一度でも食べてみたいですよね.ビヨンドミートの商品は日本国内では流通していませんが,アメリカであれば普通に販売されています.スーパーで手軽に購入できるほど流通が拡大され,肉の陳列棚に植物肉が陳列されていることも珍しくありません.
ビヨンドミートが開発した植物肉はエンドウ豆由来です.詳しい開発工程などは開示されていませんが,アレルゲンとして懸念されているダイズやグルテンなどを使用していないほか,遺伝子組み換え作物も原材料として使用していないことを明言しています.
エンドウ豆由来の加工食品といえば「ゼンブヌードル」もそうですよね.「ゼンブヌードル」は,販売チャネルを大幅に絞り込んでいるにもかかわらず,発売10ヶ月で累計販売数100万食を突破,感謝イベントを開くほどの人気を博してます.
ビヨンドミートに代表される,エンドウ豆由来の植物肉の将来性は大きいと思っています.
追記:
ビヨンドミートの原材料となるエンドウ豆の価格が急騰しています.植物肉はエコという話もありますが,原材料の高騰をどこまで吸収できるか,今後の展開が気になるところですね.
グリーンカルチャーはグリーンミート(Green Meat)というダイズ由来の植物肉を開発製造している
グリーンカルチャーは埼玉・三郷にある,植物肉を中心とした植物性食品の開発を専門的に行うフードテックカンパニーです.開発製造のみにとどまらず,外食用としてはもちろん,一般消費者向けの植物肉も販売しています.
出典:グリーンカルチャー プレスリリース
そのため,家庭の食卓に積極的に植物肉を導入することも可能です.9割以上の利用者がおいしいと満足しているほど,本物の肉と言っても過言がないほど完成度が高いのが特徴です.
外食の加工食品として提供されている植物肉にグリーンカルチャーの植物肉関連製品が多く採用されており,意識しないままグリーンカルチャーの植物肉を食べている可能性もありますね.日本にも植物肉を開発や製造している企業があるので日本でも近い将来植物肉の流通が多くなるころが想像されます.
日本も遅ればせながら大手食肉会社も業界参入の動きがみられ,フードテックビジネスの萌芽が見られます.今後の展開が楽しみですね.
植物肉が使用されているバーガーキングのプラントベースワッパーが定番メニューに!
バーガーキングは,いったん日本市場から撤退した米国由来のハンバーガーショップですが,再参入を果たし,既存のハンバーガーチェーンとは一線を画した商品ラインナップで顧客獲得を図っています.
米国本土の店舗で植物肉を使用したハンバーガーを積極的に販売してきていることもあり,日本のバーガーキングでも植物肉を使用したハンバーガーを期間限定でテスト販売しました.結果的に,日本の顧客にも植物肉を使用したプラントベースワッパーが人気になり,定番メニューに昇格しました.
人によっては本当の肉が使用されているハンバーガーよりもうまいとの意見も.
一般的なワッパーとプラントベースワッパーとでは,使用されているトマトやピクルスなどは同じでも,100円ほどプレミアムをつけて販売しています.
実際に食べてみるまでは,プラントベースワッパーが本物の肉の食感や味に勝てるわけはないというイメージの刷り込みもあったかも知れません.さらに値段も高いというのであれば購入意欲が下がってしまいかねませんが,一度食べた方々のおいしいという前評判が広がったことで多くの人が実際に注文し,人気商品になりました.
出典:株式会社ビーケージャパンホールディングス プレスリリース
むしろ,今ではバーガーキングの看板商品のひとつと捉えてもよいかもしれません.植物肉と表示されているのではなく,植物性パティと命名して販売していることも,イメージを重視する日本人受けした理由なのかもしれませんね.
追記:
バーガーキングは,南アフリカで6種類の植物肉関連商品を展開することが話題になっていますね.日本だとまだまだ需要が伴っていませんが,ヴィーガン対応というのがキーワードになっているようです.
モスバーガーでも植物肉でもあるソイパティが使用されている商品がある
モスバーガーは,国産野菜にこだわり,国産農産物の消費拡大を通じて日本農業の活性化にも貢献することをミッションに掲げる,強い個性を持ったハンバーガーチェーン.そのため,野菜が使用されている商品が多く提供されていることが特徴的です.故に,より健康志向が強い方,ダイエッターに寄り添ったハンバーガーショップということもできますね.
モスバーガーでも,栄養価が高く,日本でもなじみのある大豆を使用した「ソイパティ」の開発が,かねてより続けられ,大豆の臭みや本物の肉の歯ごたえなどに近づけることに試行錯誤を重ねてきました.
ようやく完成したモスバーガーのソイパティを用いたバーガーは,単に美味しいというだけではなく,「ファーストフード=不健康なジャンクフード」というネガティブイメージを払拭した,栄養バランスを考慮したハンバーガーとなりました.
さらに2021年9月22日からは,動物性食材や五葷(仏教などで食を禁じられている臭いの強い5種の野菜(ねぎ、らっきょう、ニラ、にんにく、たまねぎ))を使用しない“環境と身体に優しいバーガー”第2弾として「グリーンバーガー<テリヤキ>」 の販売を開始しました.健康志向や食に制限のある方々に加え,宗教上の制約で食べて良い食材が限られている方々にも,気軽に食べていただけるメニューとしました.
出典:モスバーガー プレスリリース
一足飛びにハラール対応とまでは行きませんが,多様化する食のニーズにいち早く対応しようとするモスバーガーの動きから目が離せませんね(K.T).