不思議な野菜のアイスプラント 意外と知られていない魅力や機能性に迫る!

アイスプラントは,南アフリカ原産の多肉植物で,ストレス耐性のモデル植物でもあります.サボテンやアロエの仲間で,フランス料理の高級食材として利用されています.葉や茎全体に透明できらきらと宝石のように光ってみえる細胞(プラッター細胞)がついていて,葉や茎の表面があたかも凍ったようにみえることから命名されたと言われています.乾燥に強く,土壌中の塩分を蓄積する機能をもっており,海水でも水耕栽培ができ,程よい塩味や酸味を特徴としています.しゃきしゃきとした歯ざわりで,味にクセがないことからそのまま生でも食べることができます.

国内では比較的最近にスーパーなどの店頭にならぶようになった新顔で,これまでに流通していた葉物野菜にはなかった食感ということもあって,販売サイドからもさまざまな食べ方の提案がされているようですね.

抗糖尿病成分として期待されるピニトールを含むアイスプラント

栄養価が高く,血糖値を下げる効果をもつピニトール,中性脂肪の増加を防ぐミオイノシトール,疲労回復に有効で酸味をもつリンゴ酸,クエン酸などを多く含みます.ピニトールは,グルコースを出発物質として生合成されるイノシトールの一種で,インスリン様活性が確認されていることから抗糖尿病成分として期待されています.

ある程度年齢を重ねて,健康の曲がり角にさしかかった世代にとっては,ピンポイントに気になるツボを訴求してくるかんじの食材といえるかもしれませんね(笑).

素材の希少性が人気を呼ぶ

通年栽培可能な機能性ブランド野菜として,さらに素材の希少性から人気を呼び,ツブリナ,バラフ,ソルトリーフ,クリスタルリーフ,プッチーナ,ソルティーナ,シオーナ,天山草,雫菜…といった,様々なブランド名で販売されるようになっています.



種子の会社にとっては,品種で選ばれるのが本望なような気もしますが,実際の販売シーンではむしろ特徴あるブランドを謳ったほうが「ささる」んでしょうね.理系の思考回路をもつ者としては,仕様で選ばれないというのが今一歩腹落ちできないところもありますが,世の中はだいたいこんなかんじで動いているのでしょう(笑).

アイスプラントの安全性に関する科学的意見

アイスプラントは,耐塩性のみならず,銅およびカドミウムに対する耐性も高いことからファイトレメディエーション(重金属汚染土壌に栽培することによって土壌を浄化させる技術)に有望であることが示唆されたという報告があります.言い換えれば,汚染土壌中で栽培されたアイスプラントは,重金属を多く蓄積している可能性があることを意味しています.しかしながら,アイスプラントを水耕栽培でクリーンな環境で生育させているものに関しては,別段問題にはならないものと考えられます.

アイスプラントは,国内では新顔の機能性野菜として注目されるようになりました.アイスプラントが脚光に浴びるようになった理由としては,今までの野菜になかった食味や栄養,さらに様々な料理に使える汎用性の高さなどがあるようにおもいます.食味,外見的特徴,生育期間,機能性成分含量といった観点から新品種の選抜も行われており,今後のアイスプラントの動きから目が離せません.(K.T.)