葉酸欠乏の問題と緑黄色野菜摂食の必要性

緑黄色野菜やレバー,ダイズ,果物などに多く含まれている水溶性ビタミンのひとつである葉酸.やせ願望のひとは一般的にエネルギーの摂取不足を伴っているとされており,エネルギーの摂取不足は葉酸をはじめとする微量栄養素の摂取不足とも関連しているという指摘があります.しかも葉酸は,水を使った加熱調理中における損失が大きく,特に温野菜の状態での摂取が増える冬季における葉酸の摂取不足が懸念されています.

葉酸の欠乏は神経管閉鎖障害を発生させる

血清中の葉酸値が低い妊婦においては,神経管閉鎖障害の発症頻度が高率であることが20世紀後半からしばしば報告されています.特に妊娠前期においては,大量の葉酸が必要となるにも関わらず,通常の食事だけでは十分量の葉酸が摂取できないため,海外では栄養補助食品を利用した葉酸の摂取を推奨している例もありますが,日本の厚生労働省は,現時点においては疫学的根拠が十分でないため,葉酸を多く含む緑黄色野菜の摂食による葉酸の摂取を推奨するレベルにとどめています.また,ビタミンB12が欠乏しているひとが栄養補助食品を利用した葉酸の摂取によってビタミンB12の欠乏による疾患の発見が遅れる危険性も示唆されていますので,水溶性ビタミンのひとつではありますが,葉酸の欠乏だけに目を奪われるのではなく,過剰摂取に関しても注意が必要です.


野菜ジュースの摂取は葉酸が欠乏しているひとの栄養状態の向上に寄与する

100%野菜ジュースの摂取に伴う葉酸の栄養状態の変化を調べた報告によれば,葉酸のよい供給源となる野菜,きのこ,豆類,海藻類といった副菜の摂取不足が血漿中の葉酸濃度が経年的な低下をもたらしていると指摘するいっぽう,100%野菜ジュースの摂取の有効性の検証には中長期的な経過観察が必要であることを認めた上で,100%野菜ジュースの摂取が,葉酸が欠乏しているひとたちの栄養状態の向上に寄与する有効な手段であると結論づけています.

ほうれん草やブロッコリーといった緑黄色野菜は男女問わずに重要

妊婦における神経管閉鎖障害の研究報告が多く見られるいっぽう,特に若年成人男性における野菜摂取不足による葉酸欠乏が懸念されています.高ホモシステイン血症の一要因として葉酸欠乏があるとされ,動脈硬化性疾患の若年化が危惧されているものの,若年成人男性における血漿中のホモシステイン濃度と栄養素摂取量との相関にかんする研究データはまだ少なく,これまでは妊婦ややせ願望の女性に着目されがちだった葉酸欠乏は,男性においても研究データがたまたま少ないだけであって,日頃から意識して緑黄色野菜を摂取するなどして,ややもすれば不足しがちな栄養素の摂取に務めることが重要なことは論を俟たないとおもいます.(K.T.)