北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学I 研究室片山和彦教授ら
株式会社Epsilon Molecular Engineering
花王株式会社安全性科学研究所の研究グループ
は,新型コロナウイルスに対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功しました!
大村智記念研究所片山和彦教授ら研究グループが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功|北里研究所
出典:北里大学
VHH(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)抗体とは,アルパカ由来の重鎖抗体で,温度やpHに対して強い安定性を持っていることから,新薬開発の分野では何年か前から注目されていたものです.
出典:ProteoGenix
ラクダ科動物(ラマ、アルパカ等)はH鎖のみで構成される抗体(重鎖抗体)を有し、その可変領域はVHH(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)抗体と呼ばれます。VHH抗体は温度やpHなどに対し高い安定性を持ち、微生物での低コスト生産も可能です。また、多価抗体や多重特異性抗体、薬物・化合物の修飾など、タンパク質工学的な改変も容易です。これら特長により、様々な分野での応用が期待されているものの、希望とするVHH抗体の取得方法に関しては、多くの課題(免疫する動物の確保や飼育等)が存在します。
(中略)
さらに既知のIgGやscFv等のVHの配列から、VHのフレーム領域の配列をVHH抗体のフレーム領域の配列に置き換えることで、VHH化とすることもできます。これにより、多価化や検出用酵素との融合など、従来のIgGやscFvよりもタンパク質工学的改変が容易になるというメリットがあります。
出典:プロテインエクスプレス ウェブサイト
さらに,6月2日放送のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でも大きく取り上げられました!川崎・殿町キングスカイフロントにある,花王の安全性科学研究所でVHH抗体の開発が進められているそうです.
界面活性剤の開発から,機能性材料,スペシャリティケミカルの分野へと事業展開を進める花王.VHH抗体の開発も,合成化学,スペシャリティケミカルの延長線上と捉えれば,自社の得意分野を生かした攻めと捉えることができるかも知れませんね.
出典:テレビ東京
VHH抗体でいければ,手間暇かけて動物に免疫する必要がなくなり,あとは化学合成と細胞培養で完結できるので安定した医薬品が大量につくれるようになります!
私も以前,カスタムVHH抗体の合成サービスを受託している会社に勤めていたことがあるので,個人的に懐かしい思いがしています!(K.T)