新型コロナ感染と戦う!地中海式食事法と発酵食品で腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性を向上【The Conversation】

豪州,英国,米国等を中心とした研究者が書いたニュース記事を公開する非営利メディアアウトレットネットワークの’The Conversation‘.大学,政府機関,研究助成機関,協賛企業および読者からの寄付により運営されるメディアとして高い評価を得ている’The Conversation‘の3月20日公開の記事(Coronavirus: how to keep your gut microbiome healthy to fight COVID-1)で,キングス・カレッジ・ロンドンで遺伝疫学が専門のティム・スペクター(Tim Spector)教授が新型コロナウイルス(COVID-19)感染と戦うために,地中海式食事法と発酵食品によって腸内細菌叢の多様性を向上することの重要性について触れていましたので,その内容を詳しく見ていこうとおもいます!

Coronavirus: how to keep your gut microbiome healthy to fight COVID-19| The Conversation




新型コロナ感染と戦うー感染に対する免疫応答と健康維持にきわめて重要なマイクロバイオーム(細菌叢)

マイクロバイオーム(細菌叢)と免疫系の相互作用に関する詳細は,まだ科学的には十分理解されていません.しかし,マイクロバイオームと炎症系の反応との間の関係は次第に明らかになってきています.腸内細菌は多くの有益な化学物質を産生し,食物中のビタミンAを活性化し,免疫系の調節機能を助けています.

マイクロバイオームの多様性を高め,COVID-19感染と戦う最良の食事は,植物由来の食品(つまり野菜)を多く食べる一方,ジャンクフードの摂取をできる限り減らすことだ,とティム教授は言います.

さらに,地中海式の食事を続けることによって,腸内のマイクロバイオームの多様性を改善することができ,炎症系の反応を軽減することができるとしています.

新型コロナ感染と戦うーマイクロバイオームの多様性を改善する地中海式の食事とは

魚,果物,野菜,豆類,全粒穀物,繊維を多く含むパン,ナッツ,オリーブオイル(特に高品質のエキストラバージンオイル)などを中心とした食事を指しています.脂質は,魚油,オリーブオイル,特定のナッツ油,種子油(キャノーラ,大豆,亜麻仁油など)やナッツなどの不飽和脂肪酸から摂取します.

カナダのブリティッシュコロンビア州は,’HealthLinkBC‘の中で,具体的に

– バターの代わりにオリーブオイルを新鮮なハーブと混ぜ合わせてパンにつける
– 赤身肉の代わりにランチやディナーで魚を食べる(オリーブオイルを使って焼く)
– チーズの代わりに種子やナッツをサラダにふりかける
– バターや飽和脂肪酸を多く含む油の代わりにオリーブオイルもしくはキャノーラ油で調理する
– 精製した小麦粉の代わりに全粒パン,全粒パスタ,米粉,全粒粉を選択する
– 穀物や低脂肪ヨーグルト,スープに亜麻仁油を加える
– 食事の中に占める肉の量を減らす
– パスタにミートソースをかける代わりにオリーブオイルをかけ,松の実とパルメザンチーズを添える
– 脂肪分2%の牛乳もしくは全乳から脂肪分1%の牛乳または脱脂乳に変える
– 野菜にマヨネーズやサワークリームをつける代わりにビネガードレッシングまたはフムスをつける
– デザートのケーキの代わりに果物(焼きリンゴやドライフルーツ)を用意する
– 塩を加える代わりにハーブとスパイスを使って食品に風味を加える

といった例を挙げて説明しています.

新型コロナ感染と戦うーマイクロバイオームの多様性を改善する発酵食品とは

ティム教授は,具体的にプロバイオティクスを含むナチュラルヨーグルトや手作りチーズを食べることでマイクロバイオームの多様性を改善することができると述べています.現に欧米をはじめ,世界規模でプロバイオティクス商品の発酵食品が流行し販売を伸ばしています.

日本の場合,プロバイオティクス関連の特定保健用食品に関しては「お腹の調子を整える」という表示が許可され,さらに保健機能食品制度が創設されて機能表示の幅が広がって数多くのヨーグルトにプロバイオティクスに関する機能表示が行われるようになっています.

さらに,ケフィアやコンブチャ(紅茶キノコ)のような飲み物,キムチやザワークラウトのような発酵野菜ベースの食品を推奨しています.日本では,豪州や英米と違って紅茶キノコは手に入りにくいかもしれませんが,キムチはどこでも手に入りやすい発酵食品と言えるかと思います.納豆や味噌のような日本由来の発酵食品は英国ではケフィアやコンブチャ,ザワークラウトほど普及していないために言及されていないんでしょうね.


同じく3月20日付の徳島新聞の記事や,1月29日付のBMJの論文発表などと共通しているのは,発酵食品に対する期待ですね.日本では,納豆に対する注目度が高いようですが,他国では納豆の代わりにケフィアやコンブチャ,ザワークラウトといった別の発酵食品に対して注目されているように感じられました.(K.T.)