みなさんは,ペコロスをご存知でしょうか.なかなか耳慣れない名前かもしれません.
中には,2013年に上映された映画「ペコロスの母に会いに行く」で,その名を知ったという方もおられるかもしれません.
2021年7月13日に放送されたNHK総合「サラメシ シーズン11」では,新聞記者から,愛知・知多のペコロスの栽培農家に転身した女性の取材動画が取り上げられました.
そこで今回は,高級食材としてにわかに注目を集めているペコロスの特徴について,詳しく見ていきたいと思います!
今が旬のペコロス!ペコロスってそもそも何?
ペコロスとは,愛知県知多市特産の地域ブランドとして注目されている小たまねぎのこと.
ペコロスは、直径3~4cm程度の甘みが強い小型のタマネギです。栽培の歴史は大正時代に始まり、一時は生産量で全国シェア80%を占めました。現在は、日長(ひなが)ペコロス生産組合の部会員14名が、4月下旬から8月中旬まで、約40tを京浜市場、中京市場へ出荷しています。
出典:ネット農業あいち
一般の野菜のように種苗メーカーから売られているタネ(いわゆる「F1種」)を購入して育てるのではなく,自家採種を行ない(いわゆる「固定種」),密苗(苗を密に定植すること)で育て,収穫から出荷まで非常に手間をかけて栽培しているのが現状です.
農業に多少なりともお詳しい方でしたら,自家採種による固定種の栽培が難しいことはお察しいただけるかもしれません.「一定の収量が安定的に得られる」商業ベースの「F1種」と異なり,品質が安定せず,生育にもバラツキが出やすいのです.知多のペコロスに関しても,ご多分に漏れず,栽培農家の数が年々減少の一途にあったと聞きます.
従来のタマネギと比べて糖度が高く,丸ごと料理に活用できる特徴をもちます.まさに万能野菜ですね!
ピクルスも,ペコロスの特徴を最大限に生かした調理法のひとつです.
今が旬のペコロス!全国生産量の7〜8割を占めるといわれる知多ペコロスとは?
知多ペコロスという名の通り,愛知県知多市,特に南西部の伊勢湾側に位置する日長地区で集中的に栽培されています.
1919年ごろに,地域の精農家が名古屋の八百幸商店の貝沼幸三郎から紹介され導入したというのが,知多ペコロスの源流とされています.もともとタマネギ栽培が盛んだった日長地区で,安定的にペコロスが収穫されるようになると,京浜や阪神といった消費地に出荷され,高収益作物として日の目を見るようになったということです.
その後,ペコロスの栽培面積が拡大し,省力化が進んで生産者が増加するようになると,消費者の小型化志向に呼応し,密苗による栽培が進められていきました.一方で,密苗によって早生系に品種がシフトすることで採種自体が不安定になり,栽培が難しくなっていきました.
栽培をより簡単にしようと,直蒔による作付方法が開発されました.しかし,熟練の勘を要することからペコロス農家全体には広まらず,省力化になかなかつながっていかないという現状があります.後継者不足により,高齢化と生産者数の減少傾向が続いており,新規就農者は歓迎されても手間暇を考えると積極的にペコロス栽培を勧めることはないということです.
中長期的には,消費者がいくらお金を出して欲しいと思っても,ペコロスは手に入らなくなるかもしれないのです.
知多市が地域ブランドとして推す一方で,将来のことを考えると根本的に考えなければならない課題が山積しているように思います.
今が旬のペコロス!知多ペコロスに魅せられた農業女子・近藤由佳さん
「サラメシ シーズン11」で紹介されたのは.農林水産省経営局就農・女性課女性活躍推進室が管理しているサイト「農業女子プロジェクト」に紹介されたプロジェクトメンバーのひとり,近藤由佳さんです!
大卒後12年間、新聞記者でした。地域農業を取材する機会があり、農業者の高齢化と後継者不足、食糧自給率の低迷に危機感を覚え、自分が農業をやることで、もっと若い人を増やして行きたいと思い、就農を決意しました。2012年に新聞社を退職後、新規就農者支援制度で農業を勉強。地元特産品「ペコロス」の魅力に惹かれて専業農家へ弟子入りし、2014年5月から新規就農しました。
出典:農業女子メンバー 近藤由佳|農業女子PJ
新規就農者支援制度がきっかけで,ペコロスの栽培を志したということですね!
新聞記者をやっていると,社会のひずみや課題を日々目にすることで,実際に課題を解決する側になりたいと思うのも,ごく自然なことだと思います.
市の特産品であるペコロスが、農家の高齢化と担い手不足で衰退の一途です。今後、生産拡大し、特産品としての潤沢な生産量を取り戻すため、法人化して、雇用できる農業を目指したいです。作業が根気仕事で女性向きなため、まだ子どもが小さいお母さんたちが、子ども連れでもアルバイトで取り組める農業ができないか、模索していきたいと思っています。
出典:農業女子メンバー 近藤由佳|農業女子PJ
ペコロスは,もともとが高収益作物を目指して新規導入されたものですからね.農家の高齢化と担い手不足は,国内農業全体がそうですが,特に固定種の栽培は難易度が高く,手間暇もかかるのでなおさらです.どういうふうにして彼女がこの難題を解決していくのかが気になるところですよね.
Facebookに動画を公開してペコロスの魅力を話す近藤由佳さん.今後の行方に目が離せません!
今が旬のペコロス!知多ペコロスを虎視眈々と追いかける北見ペコロスとは?
知多ペコロスが後継者不足と栽培の困難さから生産量を減らしている中,タマネギの一大産地として知られる,北海道・北見産のペコロスの存在感が増してきているようです!
機械収穫が難しく、多くが一つひとつ丁寧に手作業で収穫される「ペコロス」。そのため、大きな面積で作付けすることは困難で、生産量が限られた貴重なミニ玉ねぎ(1個あたり15~30g、通常の玉ねぎは約250g)です。
ペコロスはそのサイズを生かして、丸ごと料理に使ってみてはいかがですか。シチュー、ポトフなどの煮込みや、ピクルス、さらに、ステーキの付け合せとしてオーブン焼きと、さまざまな料理にお使いください。
出典:JAきたみらい
北見ペコロスは,知多ペコロスと比べるとまだブランドとしての認知度は低いかもしれませんが,様々な漬物に加工して販売しています.
出典:北海道北見市「食&観光」ガイド オフィシャルWEBサイト「おかわりきたみ」
ちょうどいま(7月中旬〜8月中旬頃)が北見ペコロスの収穫シーズンで,市内の畑で収穫スタッフの求人情報も出ています.
1ヶ月程度の期間限定で北見で仕事できる方は,検討してみてもいいかもしれませんね.公共交通機関がないので,クルマ通勤できる方限定ですが.
首都圏でもペコロス!千葉・酒巻農園でペコロス掘り体験!
収穫ひとつとっても手間暇がかかるペコロスですが,逆手にとって収穫体験という名目でバイト代の代わりに参加費をとるというやり方もあります.
大都市近郊だとふだん土に触れる機会が少ない人たちが多いので,うまく宣伝すれば成り立つ手法です.
千葉・白子町の酒巻農園は,自ら栽培したペコロスを「酒巻ペコロス」あるいは「外房ペコロス」と名付け,ペコロス収穫大会という名目で参加費をとってふだん土に触れる機会のすくない方々から参加費をとって農作業をうまく回しているひとつです.
私も,恵庭で加工用トマトを栽培している農園が,同様のビジネスモデルで農作業をうまくまわしている例を見知っていますが,大都市近郊の農園だからこそ成り立つと思っています.
知多ペコロスの場合は名古屋が近いので,同様のビジネスモデルを回すことで,ペコロス栽培の持続可能性を維持向上することができるかもしれませんね.
問題は,名古屋でペコロスの消費が圧倒的に少ないゆえに,地元での知名度が低いということがあるかもですが.
今が旬のペコロス!ペコロスのピクルスでおうち居酒屋♪
知多半島の半田が本社のミツカンは,知多ペコロスの地元でもあり,自社の製品と組み合わせたペコロスのピクルスの簡単レシピを紹介し,おうち居酒屋を提案しています.
[1] きゅうり、にんじん、セロリは容器の長さに合わせて棒状に切る。
[2] ペコロスは皮を取り、ラップに包んで電子レンジ(600W)で1分40秒~2分ほど加熱する。ミニトマトはつまようじ等で数ヶ所穴をあける。
[3] [1]、[2]に<調味料>を入れて漬け込む。
出典:おうちレシピ|ミツカン
ペコロスが日常的に手に入る環境だからこそ出てくる「おうちレシピ」の発想ですよね.
今が旬のペコロス!レンジで簡単・ペコロスのスープ
運良くペコロスが手に入ったら,レンジで簡単,美味しくいただけるスープをつくっちゃいましょう.
ペコロスのスープが美味しいのは,ペコロスがもつ甘みと旨味成分のグルタミン酸が良い塩梅で混じり合うためです.
ペコロスは出荷量が多くないので使われていませんが,AIRDOの機内サービスでおなじみのオニオンスープは定番中の定番ですよね.AIRDOのオニオンスープにさらに素材が持つ甘みを加えたのがペコロスのスープと言ったら言い過ぎでしょうか.
限定販売でいいので,市販品であればいいのにと思います.
もし市販品でペコロスのスープが売られているのをご存知の方がおられましたら,ぜひ教えてください!お願いします(K.T).