もちもちした食感が人気のタピオカ.
その原料は言わずと知れたキャッサバですが,健康の観点からみるとどうなんでしょう.
気になるタピオカと原料のキャッサバについて,その実態に迫ってみたいとおもいます!
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タピオカ原料のキャッサバには,猛毒性の青酸配糖体が含まれている
キャッサバは,インドネシアやタイなどの東南アジアで多く生産されているイモの一種です.キャッサバにはリナマリン(フォルゼオルナチン),ロタウストラリンといった青酸配糖体が含まれていますので,加熱や水洗によって毒を取り除き食用にしています.
リナマリン(フォルゼオルナチン)
ロタウストラリン
キャッサバのイモから得られたデンプンがタピオカです.キャッサバは,大きく苦味種と甘味種の二種類に分けることができ,特に苦味種に青酸配糖体が多く含まれ.主に加工用として利用されます.甘味種はスウィートキャッサバとも呼ばれ,食用部分に含まれる青酸配糖体の量が少ないため,主に食用に使われます.
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キャッサバに限らず,イモ類はもともと毒性をもっている
熱帯で主食として栽培されていたイモ類は,もともと毒性をもつものがほとんどでしたが,栽培における系統選抜の過程で無毒化に成功したものが多くあります.
キャッサバの場合,青酸配糖体そのものに毒性はありませんが,リナマラーゼといった分解酵素の働きによって分解する過程で青酸が発生します.
加熱により酵素を失活させることで毒を取り除くことが可能ですが,残留した青酸配糖体を含むキャッサバを食べることにより,消化の過程で青酸が発生することがあります.とくに量によっては致命的になるリスクがあるために,もっぱら低毒性のスウィートキャッサバがタピオカの原料として用いられています.
また,青酸配糖体は水溶性のため,水に溶かし出すことによって取り除くことができます.キャッサバが食用として広く普及してきた背景には,こうした毒を取り除く方法の開発と調理法が大きく影響していると言えるとおもいます.
ではなぜキャッサバ由来のタピオカを食べるようになったのか
キャッサバはもともと,アフリカが中心となって生産されてきましたが,東南アジアを中心として家畜飼料や加工デンプンの原材料としての用途が拡大しました.
苗以外の初期コストがほとんどかからず,栽培が簡単で収入になる農作物ということが拡大の大きな理由です.スウィートキャッサバの塊根から製造したデンプンをタピオカとよび,デザートの材料や飲み物のトッピングとして利用されるようになりました.ベトナムでは,キャッサバからタピオカを搾り取った残りを使って発酵させ,味の素を製造しています.
タピオカのもつもちもちかつぷよぷよとした食感は,バレイショをはじめとした他のデンプンと比べてデンプン含量が高く,タンパク含量が少ないことに由来しています.消費者受けする食感に加え,デンプンの抽出コストが安いこともタピオカが大ブレイクした要因のひとつかとおもいます.
タピオカ人気に火をつけた「グルテンフリー・ダイエット」
タピオカは原材料がキャッサバであるため,小麦,大麦,ライ麦などの穀物に含まれるグルテンが含まれていません.そのため,グルテンアレルギーの人たちにとって,あるいはグルテン中に含まれる食欲増進を促すグリアジンの摂取を忌避する「グルテンフリー・ダイエット」を志向する人たちにとって一目置かれる存在となりました.「グルテンフリー・ダイエット」の是否にかんしては賛否両論ありますが,タピオカ人気を加速した要因であることは確かなようです.
たとえば,米穀安定供給確保支援機構さんは,米粉でつくるグルテンフリーのタピオカ風ドリンクの作り方を動画配信されております.
気をつけるべきはタピオカそのものよりもむしろ付け合わせで摂取する糖分の量
台湾発祥のタピオカミルクティーが人気になっています.結構息が長いですね.いまは第二次ブームになるのかな??
以前,WHO(世界保健機構)と国際連合食糧農業機関(FAO)が共同でキャッサバおよびキャッサバ製品中に含まれるシアン化水素酸およびマイコトキシン類に関するデータの募集を行ったこともあり,なかにはタピオカに夾雑する化学物質やカビ毒による健康への懸念を持たれる方もおられるようです.
ただ,実際のところ,タピオカに夾雑する化学物質やカビ毒よりもむしろ,タピオカミルクティーのような高カロリーの清涼飲料の過剰摂取による生活習慣病への懸念のほうがより重要かと思います.
どちらかというと身体が甘いものを欲するということもありますが,摂取カロリーと消費カロリーのバランスを考えて,節度ある食べ方(飲み方)をするのが良いのではないでしょうか.(K.T.)