美味しくて機能性の面でも注目の比内地鶏 その特徴に迫る!

天然記念物に指定されている比内鶏から,品種改良してつくりだされた比内地鶏.一般的なブロイラー(肉用鶏)よりもおいしいとの評価から,そのブランド価値を大いに高めています.

鶏肉に含まれる高度不飽和脂肪酸(アラキドン酸)含量の違いがおいしさに影響

比内地鶏と一般的なブロイラーとを比較実験したところ,一般的なブロイラーよりも比内地鶏の方が長鎖高度不飽和脂肪酸のひとつであるアラキドン酸が有意に多く含まれていたことから,アラキドン酸含量のちがいがおいしさに影響をおよぼしているのではないかと考えられました.さらに,屠殺前の2週間前からパーム油,コーン油,アラキドン酸高含有油をそれぞれ飼料に添加し比内地鶏に与えたところ,アラキドン酸を多く含む油を飼料に添加したグループのほうが,うまみ,こく味,後味において,他の油を飼料に添加したグループよりも高い結果が得られたことから,アラキドン酸含量が増えることによって鶏肉のおいしさが向上するものとみられています.

私も長らく試薬会社に勤めていましたが,一時期アラキドン酸が爆発的に売れていたことがあって,その確たる理由がつかめずもやもやしていた時期がありました.アラキドン酸が単においしさに影響する成分というだけでは説明しきれなかったので.

アラキドン酸は脳の発達に関与する

比内地鶏に多く含まれるアラキドン酸は,肉のおいしさに影響をおよぼしているだけではなく,機能性の面においてもひろく注目されている物質のひとつです.アラキドン酸は高齢者において,リノール酸からアラキドン酸への変換能が低下し,脳機能の低下にアラキドン酸が関与していることが明らかになってきています.

また,乳幼児期の脳の発達段階においてもアラキドン酸の摂取が重要であることが報告されています.加齢によって低下するアラキドン酸を日常の食事によっておいしく補うことが重要と考えられます.

さきほどの試薬としてのアラキドン酸の需要の話ですが,脳の発達との関連性ではある程度説明することができます.いわゆる「脳科学ブーム」というのも影響しているとおもいます.

気をつけたいカンピロバクター食中毒

内閣府の食品安全委員会では,「鶏肉等におけるカンピロバクター・ジェジュニ/コリ」にかんするリスクプロファイルを公表し,比内地鶏を含む鶏肉摂取に対する注意喚起を行っています.仮にカンピロバクターに感染していない鶏を飼育したとしても,とくに内臓摘出の工程でカンピロバクターと交差汚染する可能性が高まることが指摘されています.2006年にリスクプロファイルが公表されてからも鶏肉によるカンピロバクター食中毒が減少していないことから,2018年にリスクプロファイルが更新されました.

比内地鶏はおいしく,かつ脳の発達にも関与するアラキドン酸も多く含まれることから,日々の食生活の中に積極的に取り入れていきたい食材のひとつです.いっぽうで食中毒事案も少なくないことから,生食や不十分な加熱を避けるよう,工夫して食べていければとおもいます.(K.T.)