TBSテレビ「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」,「教えてもらう前と後」で話題になった,お好み焼き粉の摂食によるとみられるアナフィラキシーショックとその回避方法についてご紹介します.
常温で長期保存したお好み焼き粉を食べるとアナフィラキシーショックを起こす可能性が高くなる
アナフィラキシーショックとは,アレルギー反応の中でも特に,短時間で全身に激しく反応が現れるものをいいます.食品安全委員会が注意喚起していますが,お好み焼き粉やホットケーキミックス粉のようなコナモノを開封状態のまま,常温で長期間保存していると,粉の中にダニが侵入し大繁殖することが知られています.こうしたコナモノを棲み家として増殖するのがチリダニとよばれる,住環境のチリの中に生息しているダニの一種です.これらのダニをコナモノと一緒に経口摂取することにより,全身浮腫性紅斑,動悸,呼吸困難感,嘔気,腹痛といったアナフィラキシーショックの諸症状が現れ,場合によっては死に至る危険性もあるのです.
コナモノのアナフィラキシーショックの原因はハウスダストに含まれるチリダニ
コナモノに含まれるダニの経口摂取によるアナフィラキシーに関する研究(2010)では,お好み焼き粉と薄力粉にチリダニの一種であるコナヒョウヒダニを添加培養して,ダニの数と,アナフィラキシーショックの原因物質であるダニの抗原量の推移を確認したところ,薄力粉と比較して複数のブランドのお好み焼き粉で増加傾向が見られたということです.「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」でも,聖路加国際病院に救急搬送された患者の使用したお好み焼き粉から1グラムあたり約1万3000匹ものダニが検出されたと放送されていました.同じコナモノでも,動物性タンパク質が含まれているお好み焼き粉やホットケーキミックス,たこ焼き粉がダニの好物であるために,アナフィラキシーショックの危険が高いと言えます.
米国では,ホットケーキミックスでのアナフィラキシーショックが多いことから「パンケーキシンドローム」とも呼ばれています.
コナモノのアナフィラキシーショックを起こすのはダニアレルギーのある人
ダニが繁殖したコナモノを摂食しても,アナフィラキシーショックになるひととならないひとがいます.その違いは,ダニアレルギーがあるかないかだと,昆虫学者で国立環境研究所の五箇公一さんは指摘しています.いずれにせよ,ダニアレルギーのあるなしにかかわらず,ダニが増殖しない環境づくりが重要と言えるでしょう.そのためには,1)ダニが増えないように日頃から掃除を心がける,2)密封した上でつねに冷蔵保存を心がけ,ダニが繁殖しないようにする,3)常温状態で保存し,ダニの増殖が疑われるものは,加熱しても効果はないので摂食を避けるなどの注意が必要でしょう.コナモノのアナフィラキシーショックは,開封後に混入したダニの増殖により起こるため,アレルギー物質の食品表示とは関係なく発生します.
アナフィラキシーは一刻を争う病気です
コナモノのアナフィラキシーショックは予防が大切なのはもちろんですが,実際にアナフィラキシーショックを起こした場合には,迅速な判断と対処が重要となります.前述の全身浮腫性紅斑,動悸,呼吸困難感,嘔気,腹痛といった症状は,アナフィラキシーを疑う基準に含まれていますので,早期に医療機関に受診されることを強くお勧めします.(K.T.)