カンピロバクターによる腸炎が今夏も!鳥刺しなどの鶏肉料理で気になる健康被害から身を守るには!

2021年7月12日,千葉県は,香取市の介護老人保健施設で給食を食べた入所者16人が発熱などの症状を訴え,うち3人の便から食中毒を起こすカンピロバクターが検出された旨を発表しました.

令和3年7月8日(木曜日)午前11時30分頃、香取市内の介護老人保健施設「おおくすの郷」から「施設入居者複数名が下痢等の症状を呈しており、患者3名の便からカンピロバクターが検出された。」旨の連絡が香取保健所にあり、調査を開始した。
調査の結果、当該施設の入居者のうち、16名が下痢等の症状を呈していたことが判明した。
患者に共通する食品は、当該施設の給食施設が提供した食事に限られており、患者の便から食中毒の病因物質であるカンピロバクターが検出されたこと、患者の発症が一峰性であり、発症状況がカンピロバクターによるものと一致したことから、本日、香取保健所長は、当該給食施設を原因施設とする食中毒と断定し、当該給食施設の使用停止を命じた。
なお、患者は全員快方に向かっている。

出典:千葉県庁 公式サイト

2021年6月9日に今夏初の食中毒注意報を発令した大分県でも,臼杵市の高齢者入所施設で給食を食べた入所者39名のうち,8名が食中毒の症状を訴え,うち4名からカンピロバクターが検出されたと発表しました.

いっぽう,2021年7月24日に放送される放送大学ex(BS231ch)「食の安全」では,「生物学的病因Ⅰ(細菌・ウイルス)」と題し,カンピロバクターによる食中毒がタイミングよく取り上げられる予定です.

毎年夏になるとニュースによく取り上げられるカンピロバクターによる食中毒.今回は,カンピロバクターによる食中毒について,カンピロバクターとはなにかについて,カンピロバクターでよく取り上げられる鳥刺しに触れた後,対策などについても詳しく見ていきたいと思います!




カンピロバクターによる腸炎から身を守る|カンピロバクターとカンピロバクター食中毒(カンピロバクター腸炎)の概要について

カンピロバクターは,らせん状のグラム陰性菌で,低温の方が常温よりも生き残りやすい特徴をもちます.カンピロバクターに汚染された食品や水道水,井戸水から直接,あるいは汚染された調理器具等からの二次汚染を介し,カンピロバクターを摂取することによってヒトが感染することがあります.特に抵抗力の弱い子どもや妊婦,高齢者は気をつける必要があります.

細菌性食中毒の年間発生件数の約6割をカンピロバクター食中毒が占めています.

鶏レバーやささみなどの刺身,鶏肉のたたきなどの半生または加熱不足の鶏肉料理によるカンピロバクター食中毒が多発しています!!鶏肉は食生活に重要な食材です.適切に取り扱い,十分な加熱調理をして,安全に提供しましょう.

出典:厚生労働省

鉄板は,鶏の生肉や半生肉の喫食を避けることなんでしょうけれど,南九州のように,地域の食習慣として鶏の生肉や半生肉を多く食べるところもあります.単によく火を通して食べようという話では,物事は片付かないんですよね.こういったところではどういった対応しているかについては後述しますね.

カンピロバクターによる腸炎から身を守る|鳥刺しは危険か

カンピロバクター食中毒は,鶏肉料理によるものが多いということが,厚生労働省や食品安全委員会,各地方自治体等からの情報提供によって見えてきます.

生の鶏肉や鶏レバーには、カンピロバクターが高い確率(注1 67.4%)で付着しており、数百個程度の少ない量の菌を摂取することにより発症します。さらに鶏肉は内部にまで菌が入り込むため、タタキ(表面を焼いたもの)や、しもふり(湯引きしたもの)では、菌が生き残り食中毒となることがあります。

出典:名古屋市 公式サイト

名古屋市のように,カンピロバクター食中毒の多発に苦慮している自治体がある一方,鶏肉の生食文化をもつ鹿児島県や宮崎県では,独自のガイドラインを作成し,カンピロバクター食中毒を自治体ぐるみで抑え込んでいます.

例えば,鹿児島県の例を挙げてみましょう.

鹿児島の食文化である生食用食鳥肉について安全確保を図るため,県では生食用食鳥肉の衛生基準「生食用食鳥肉の衛生基準」を平成12年2月に策定し,食鳥処理場での加工,飲食店での調理,成分規格,保存,運搬,表示といった目標基準を定め,関係事業者へ指導してきたところですが,今回,食鳥肉の微生物の試験結果を基に当該基準を見直し,改訂しましたのでお知らせします。

出典:鹿児島県 公式サイト

この「生食用食鳥肉の衛生基準」では,一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがあることを所与のものとしたうえで(リスクゼロはありえないことを明確化),子ども,高齢者,食中毒に対する抵抗力の弱い人は食肉の生食を控えることを明文化し,特に鳥刺しにおいては,

鳥刺しの処理は,次のように行うこと。
(ア)鳥刺しを処理するまな板及び包丁等の器具は,専用のものを用いること。専用の処理台については,設置するのが望ましい。また,これらの器具は,清潔で衛生的な洗浄消毒の容易な不浸透性材質であること。
(イ)手指又は器具が汚染されたと考えられる場合,またはその他必要に応じて,その都度洗浄又は洗浄消毒を行うこと。
(ウ)器具の洗浄消毒は,83℃以上の温湯により行うこと。
(エ)手指は,洗浄消毒剤を用いて洗浄すること。

出典:鹿児島県 公式サイト

と厳格なガイドラインを示した上で.解体作業時に細菌汚染のリスクが高い「筋胃,肝臓」を対象から除外しています.

その結果が,鹿児島県においてカンピロバクター食中毒の発生抑制につながっているというわけですね.

食の安全,安心は,国の基準だけでは不十分で,さらなる厳格な対応が,鶏肉,特に生もしくは半生の鶏肉料理には求められているということが言えそうです.

カンピロバクターによる腸炎から身を守る|ついに鳥刺しの自販機も登場!

県独自のガイドラインを設け,鳥刺しをはじめとする鶏肉料理の食文化を守る鹿児島では,ついに鳥刺しの自販機まで登場しました!
南九州市にある真栄ファームさんは,安全安心な黒さつま地鶏を消費者へ届けることにこだわり,2021年4月より同市にもともとあった直売店を改装し,鳥刺しの自販機の稼働を開始しました.

生の鶏肉は危険だからよく加熱して食べるという対処の仕方ももちろんありですが,鹿児島のように,自ら厳格なガイドラインをつくり,それに地元の関係者も呼応して生産加工すれば,ここまでできるということなんでしょう.

あっぱれというほかありません.

カンピロバクターによる腸炎から身を守る|鶏肉を冷凍処理することでカンピロバクター汚染を低減

前述の真栄ファームさんの直売店には,鳥刺しの自販機の横に冷凍処理した鶏肉の自販機が置かれています.これをみて,食鳥処理の際に細菌汚染のリスクを極力低減することと合わせて,冷凍処理した場合の汚染低減効果も考慮されているのだなと感じました.

日本食品微生物学会雑誌 32 巻 (2015) 3 号に「冷凍処理による鶏肉中でのカンピロバクター汚染低減効果に関する検討」と題する論文が掲載されています.

鶏肉におけるカンピロバクター・ジェジュニ/コリ汚染を流通段階で制御するための一手法として,冷凍処理の有効性を検証した.NCTC11168および81–176株を用いた添加回収試験の結果,鶏挽肉における生存性は,-20℃での2週間の冷凍処理により,最大で約1.9–2.3対数個の減少を認めた.40%の自然汚染率をあらわす鶏挽肉を同上温度での冷凍処理に供したところ,汚染率は1日後には半減し,一週間後にはさらにおよそ半減した.急速冷凍処理(Crust freezing)を行った食鳥部分肉(ムネ・ササミ・レバー・砂肝)は,チルド処理群に比べて,相対的に低いカンピロバクター汚染菌数を示した.しかし,モモ肉ではその差異は認められなかった.輸入冷凍鶏肉の本菌汚染率は,2.2%(1/45検体)と,国産チルド鶏肉検体の陽性率(26.7%, 12/45検体)に比べて顕著に低い値を示した.以上の成績より,冷凍処理は,鶏肉におけるカンピロバクター汚染を低減する一手法であることが示された.

出典: 日本食品微生物学会雑誌(J-STAGEにて公開)

これはJ-STAGE経由でフリーでダウンロードして読むことが可能です.よろしければご参照ください.

生や半生の鶏肉の喫食リスクが高い方々にとっても,冷凍処理を行うことによってより安全性の高い鶏肉が提供できるというわけですね.

たとえ生食用食肉・食鳥肉であっても,子どもや高齢者など食中毒に対する抵抗力が弱い方については,生食を控えていただきたいと考えています。

出典:鹿児島県 公式サイト

これが現実解かと思います.

食品に100%の安全・安心はありません.いかにリスクを減らして美味しく食べるかというところに尽きると思います.同じものを食べてもひとによって食中毒を起こす人もいれば起こさないで済む人もいます.

身の程を知って,これまでの食経験と自分の健康状態と向き合いながら,食べられる範囲のものを食べましょうというのが,現段階で言えることなのかなと思います(K.T).