バランスの良い食事は,健康の基本ですよね.
魚や肉をあまり食べないで,タンパク質不足などの低栄養に陥っていることが,特に高齢者の間で問題になっています.
参考:健康寿命延伸と食(栄養)|かながわ未病ナビサイト
そこで今回は.食事の面から認知機能の低下を防ぐためにはどのようにすれば良いのか,見ていきたいと思います!
健康寿命を伸ばす第一歩は高タンパク・低糖質(低GI)
高齢化に伴い,認知機能が低下し,認知症の予備軍である軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment; MCI)の方が増加傾向にありますが,バランスの良い食事を意識し,生活習慣を改善することによって,軽度認知障害から認知症へ移行するのを遅らせたり,食い止めたりすることが可能と考えられています.
出典:味の素プレスリリース
福岡県糟屋郡久山町でのコホート研究では,大豆や大豆食品,野菜,藻類,牛乳および乳製品の摂取が多いとが認知症のリスクを軽減し,コメの摂取が多いと認知症のリスクが高まるとされています.また,糖質を主とする高カロリー食や低タンパク食が認知症のリスクを高める傾向にあるという報告があります.
参考:認知症疾患ガイドライン2017(日本神経学会)
つまり,
・食事中の糖質の摂取比率を低く
・食事中のタンパク質の摂取比率を高く
したバランスのよい食事を意識的に摂ることが,認知機能の低下を防ぎ,健康寿命を伸ばすことにつながるということになるわけですね.
出典:味の素プレスリリース
先日(10月6日)に味の素が行なったプレスリリースの中で,東京都健康長寿医療センター研究所の北村明彦さんによる「認知機能低下を防ぐ栄養と生活習慣に関して」の講演内容が紹介されました.
この中で,米国の認知機能が健常な高齢者に対する食事調査のコホート研究を取り上げ,糖質の摂取比率が最も高い区分,タンパク質の摂取比率が最も低い区分で,認知機能低下リスクが高いという結果が紹介されています.
出典:味の素プレスリリース
健康寿命を伸ばすキーはアラキドン酸をはじめとする脂肪酸
かながわ未病ナビサイトにも書かれていましたが,食肉などの動物性食品を十分に摂らないと,神経細胞の生成を促進するアラキドン酸が不足し,認知機能の低下につながります.アラキドン酸は,リノール酸から合成される必須脂肪酸のひとつです.アラキドン酸は,サプリメントとしても市販されていますが,まずふだんの食品で摂ることが重要ですね.
出典:食品成分データベース|文部科学省
また,食肉中に含まれるオレイン酸やステアリン酸はLDLコレステロール値を下げる働きを持っており,高齢になってもバランスよく食べることが重要といえると思います.
健康寿命を伸ばすには食事の多様性も重要
国立長寿医療研究センターの大塚礼さんらは,多様性に富んだ食習慣の人ほど加齢による脳の海馬の萎縮が抑制されることを明らかにしています.
今年9月2日に出たばかりの,European Journal of Clinical Nutritionに掲載された論文によれば.食事の多様性と脳の形態に焦点を当てた最初の大規模な縦断的研究で,食事の多様性が高いほど,その地域に住む成人の海馬の体積減少が小さいことが示されました.
出典:Dietary diversity is associated with longitudinal changes in hippocampal volume among Japanese community dwellers|European Journal of Clinical Nutrition
つまり,多様な食品をバランスよく食べることこそが,海馬の萎縮を防ぎ,健康寿命を伸ばすことにつながるということなのですね.
毎日の食事に多様性を持たせるのはなかなか難しいかもしれませんが,中食や外食などもうまく取り入れながら,いきいき健やかな毎日を長く維持していきたいと思います(K.T).