ポリフェノール豊富なライチで急性脳炎 その実態は??

ライチによるとみられる急性脳炎で子どもが大量死したことがニュースになっています.
いっぽうで,ライチといえば抗酸化作用が期待されるポリフェノール豊富なことでも注目されています.
では,安心してライチを食べるにはどのようなことを知っておけばよいのかを探ります!

インドでライチによるとみられる急性脳炎で子どもが大量死

インド東部のムザファルプールで,未成熟のライチの果実を食べた100人を超える子どもたちが死亡し,さらにその影響でライチの売上が15−20%も落ち込んでいる,とインドメディアで報道されています.ただし,現在のところ子どもたちの死因がライチ果実を食べたことが引き金になっているとしても,どのような理由で命を奪ったかについてはまだ詳細が明らかになっていません.


ライチを食べたことによる死亡事故として考えられるのは残留農薬とライチがもつ自然毒

過去の事例を紐解いてみると,ライチを食べることによって引き起こされる中毒として,以下の2つが原因として挙げられています.

(1)ライチに残存する農薬の可能性
台湾では,ライチ栽培に殺虫剤として2017年にイミダクロプリド等のネオニコチノイド系農薬の使用を認可しましたが,養蜂農家がハチにおけるイミダクロプリドによる慢性中毒に対する懸念を示したことから,ライチにおける使用を2年間停止しました.まだこれらの農薬に対する科学的根拠の証明は途上にあり,今後の行政判断の行方が注目されています.

(2)ライチに含まれる自然毒の可能性
米国疾病管理予防センター(CDC)は,2015年に,アジア諸国で発生した,ライチ果実が関係したとみられる急性脳炎の推定原因を明らかにしています.ライチの果実中には,もともとヒポグリシンとよばれる天然の毒性物質が含まれており,ライチの類縁にあたるアキーの果実も同様にヒポグリシンが多く含まれていることが知られています.CDCは,ライチ,アキーともに,栄養不良の児童が多量にこれらの果実を摂取すると,血液中のグルコース値が著しく低下するために,ほぼ確実に中毒性低血糖症候群にかかると警告しています.

いっぽうで抗酸化作用が期待されるポリフェノールも豊富なライチ

食べる年齢と食べる量によっては死に至ることもあるライチですが,シミの原因となるチロシナーゼに対する活性を抑制するほか,抗酸化作用が期待されるポリフェノールが豊富な果実としても知られています.また,ライチ由来のポリフェノールを分解して吸収性を高めた「オリゴノール」は機能性成分として,健康食品や飲料・食品として幅広く利用されるようになっています.(K.T.)