増え続けるアニサキスによる魚介類の食中毒にとどめを!瞬間大電流(パルスパワー)を用いたアニサキス感電殺虫装置がお目見え!!

一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません
出典:アニサキスによる食中毒を予防しましょう|厚生労働省

過去に,このブログで美味しいお魚が食べられなくならないためにも,アニサキスフリーの養殖魚を増やしたり,冷凍技術をうまく活用することによって,たとえ近海の天然魚であっても安全に食べられるような工夫が必要となってくるという話を書きました.

厚生労働省のアニサキスによる食中毒の注意喚起ページにもありますが,予防の手段は冷凍か加熱のみ,さらにアニサキスフリーの養殖魚を選択するなどの工夫をしないと,天然魚の刺身の場合は特に,ブラックライトを利用した目視による除去にも限界があり,夾雑物であるアニサキスの100%除去は困難だとおもいます.お刺身なども,アニサキスによる食中毒を恐れて売り上げにも影響をおよぼしているようです.

そこに一石を投じたのが,瞬間的強電界パルス(パルスパワー)を用いたアニサキス感電殺虫装置の登場です!

アニサキスが仮に全量取り除くことができなかったとしても,冷凍技術を利用しないでも安全にお刺身が食べられるようにできるというのは,お刺身やお寿司などをいつまでも美味しく食べたいと願う多くの人たちにとって,理想的な食品加工技術だといえるのではないでしょうか.今回は,注目のアニサキス感電殺虫装置について深掘りしてみたいとおもいます!




増え続けるアニサキスによる魚介類の食中毒にとどめを!パルスパワーによる生体物性制御とその食品プロセス応用

熊本大学産業ナノマテリアル研究所は,二次元ナノマテリアルにかんする基礎研究と,その研究成果をもとにした産業インパクトのある成果の創出を目的とする熊本大学の附置研究所のひとつです.この熊本大学産業ナノマテリアル研究所の中でも,バイオエレクトリクス分野に所属する浪平隆男准教授は,パルス高電界による非加熱食品プロセスに着目し,パルスパワーとよばれる,瞬間的強電界パルスの食品プロセスへの応用を検討してきました.

熊本大学と,長崎沖で獲れたアジやサバを生食用の刺身に加工を行っている水産メーカーであるジャパンシーフーズが共同で7月2日にオンラインで記者発表を行いました.その中で,魚の身に瞬間的に大電流を流すことによって,アニサキスを死滅させ,しかも通常行われている刺身用に冷凍した魚の解凍品よりも品質劣化が少ないという結果を明らかにしました.


出典:熊本大学

これは,アニサキスによる食中毒のリスクを抑えつつ,お刺身をより美味しく食べられるような高品質のコールドチェーンを構築したいという願いがようやくかなう時代がやってきたということで,生の魚をいつまでも美味しく安全安心に食べたい人たちにとっても看過できない朗報だと思います!

こだわりの食情報をお届けするWEBマガジン「おいしんぐ!」を運営する,株式会社iD代表取締役の金沢大基さんが,なんと自身のブログでアニサキス...

増え続けるアニサキスによる魚介類の食中毒にとどめを!パルスパワーによる食品加工技術のポイントは?

パルスパワーによるアニサキス殺虫の様子が,2021年7月2日放送のRKBニュースに取り上げられました.

いままでのべ数でいうと,5万匹にものぼるアニサキスの殺虫実験を繰り返し行なってきたという,ジャパンシーフーズの井上陽一社長.アニサキスが必ず死ぬという条件を,つごう3年間にわたる実験の結果,算出することに成功したそうです.これは素晴らしいですね!

パルスパワーによるアニサキス殺虫のピーク電力は,なんと100メガワット

100メガワットというと,八雲にできたメガソーラーの出力がだいたい100メガワット強ですので,瞬間とは言え,その電力量の大きさには驚嘆します.



出典:SBエナジー

RKBのリポーターの舌をもってしても,おいしさと安全の両立が図られているパルスパワーによるアニサキス感電殺虫装置.これを使っているサバの刺身であることを認証できるようにして販売できれば,こんな良いことはありませんね.博多で食べて絶品だったサバのお刺身.他所でも安心してしめさばなどに加工することなく安心して食べられるようになったら,これはなんと素晴らしいことでしょう!!

ジャパンシーフーズ社長の井上陽一さんが,RKBラジオの「下田文代 リーダーズストーリー」で詳細について話されています.

ジャパンシーフーズ社長・井上陽一|RKBラジオ「下田文代 リーダーズストーリー」

話を聞いてみて,IT企業からご家族が経営しているジャパンシーフーズに転職したあと社長に就任した井上さんがあってこそのイノベーションだとかんじます.

食の安全に対する信頼回復が急がれる水産業界。同社は以前からアニサキス対策に積極投資し、100%の安全宣言ができるよう努力を重ねている。「当社の商品だからと安心して購入してもらえるよう信頼性を高め、お客様に驚きと感動を提供したい。今後は試食販売回数を増やし、売り場を活性化させる」と意気込みを語った。

出典:ふくおか経済web

アニサキス報道で元気のない水産売り場を盛り上げたいと考える井上さんにとって,アニサキス対策は,少なくともジャパンシーフーズにいる限りにおいては,いわばライフワーク的な位置付けなのではないかと勝手に思っています.

サバといえば,今話題のサバ缶でおなじみの魚.中には,丸竹のしめ鯖のなつかCMを覚えている方もおられるかもしれません. 一昔前ま...

増え続けるアニサキスによる魚介類の食中毒にとどめを!パルスパワーの知財はどうなってるの?

2019年7月23日に,熊本大学とジャパンシーフーズの共同出願で特許出願されています(特開2020-18296(P2020-18296A)).

【課題】対象物の品質を保ちつつ、大量処理が可能な、寄生虫殺虫方法等を提供する。
【解決手段】対象物の内部の寄生虫を死滅させる寄生虫殺虫システムを用いた寄生虫殺虫方法であって、前記寄生虫殺虫システムは、液体を保持する浸漬槽3と、正極電極7a及び負極電極7bからなる一対の電極と、前記一対の電極の間にパルス大電流を発生させるパルス電源と、前記パルス電源を制御する電源制御部とを備え、前記浸漬槽3の中にある前記液体に浸した前記一対の電極の間に前記対象物を浸漬する浸漬ステップと、前記電源制御部が、前記パルス電源を制御して、前記一対の電極の間にパルス大電流を発生させるパルス大電流発生ステップとを含む、寄生虫殺虫方法である。

そのまんまなんですが,大電流パルスを魚の寄生虫殺虫に生かそうと考えた発想が素晴らしいと思います.

【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、冷凍殺虫方法では、身質が劣化するなど、その品質が低下し、生食用であっても「冷凍食品」に分類され、「解凍」表示が義務付けられるため商品価値も3割ほど低下する。加えて、処理量は24時間で20kgほどであり、大型フリーザー等の初期コストだけでも620万円ほどと高い。
また、目視除去方法では、アニサキスが魚身表面より1mm以上潜り込むと視認不可能となる。そのため、目視除去方法のみでは、魚身からアニサキスを100%除去することは不可能である。加えて、1時間当たりの処理量は19.2kgほどで、手作業で神経を使いながらの除去作業となるため、経験が作業効率に大きく影響し、その人件費も極めて高い。
さらに、本願発明者らが開発したパルス発生システムは、カイヤドリウミグモに有効であったからといって生物的な構造が全く異なるアニサキスに対して有効であるかどうかは未知であった。また、カイヤドリウミグモに対して直接的にパルス電流を流した場合と異なり、魚類の体内に生息するアニサキスにはパルス電流を間接的に流すこととなる。そのため、アニサキスに対してこのような手法がどの程度有効であるかはなおさら不明であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、対象物の品質を保ちつつ、大量処理が可能な、寄生虫殺虫方法等を新たに提供することを目的とする。

出願した発明者らは,当初,カイヤドリウミグモを駆除する方法として,パルス発生システムを開発したそうです.そのぱする発生システムを応用してアニサキス駆除に生かしたというのが今回の特許です.

公開特許は,どちらかというと技術に偏り社会実装という観点で微妙に感じられる,いわゆる防衛特許的なものが多いように私は感じておりました.今回の特許は,既に社会的な課題が明確にあり,既に他で実用化されている技術を横展開してこれから当該市場と消費者に対して貢献していこうという視点が明確に見えるので,斜め読みしただけでもワクワク感を覚えました.ナイスです♪

増え続けるアニサキスによる魚介類の食中毒にとどめを!パルスパワーを生かしたチルド非凍結サバが流通するのはいつ?

記者発表の話などから,今秋以降,パルスパワーを生かしたチルド非凍結サバが流通してきそうです.ただ,最初のうちは,サバの刺身に馴染みのある福岡を中心とした九州が中心で,サバの刺身に馴染みがない,アニサキスによる食中毒の懸念が強い他の地域への浸透はもうちょっと先になりそうな気配です.

おさかなのコールドチェーンも,イノベーティブな経営者に倣ってどんどん変わっていってほしいなと思わずにはいられません.今後のジャパンシーフーズの活躍に大いに期待したいと思います(K.T).

MBSテレビ「よんチャンTV」で,アニサキス食中毒について大阪公立大学の城戸康年教授が解説し,話題になっています. 「よんチャ...